Monsoon Town
チンと、エレベーターが止まった。

開いた扉の向こうにいたのは、
「那智」

陣内だった。

呼ばれた瞬間、ドキン…と那智の心臓が跳ねた。

(名前を呼ばれただけなのに、何で心臓が跳ねたんだろう…?)

そう思いながら、那智はエレベーターを下りた。

「ずいぶんと変わったな」

上から下まで視線を動かして那智を見た陣内が言った。

「…変わっちゃダメですか?」

陣内の視線からそらすようにうつむくと、那智が言い返した。

「いや、いいと思う」

陣内の指が那智の髪をすくった。

髪に触れられた那智の躰がビクッと震えた。
< 197 / 433 >

この作品をシェア

pagetop