Monsoon Town
「――周さん?」

後ろから声をかけられ、振り返ると藤堂が立っていた。

彼の姿に、綾香は黙っていられなかった。

「ねえ!」

気がつけば、藤堂の両肩をつかんでいた。

つかまれた藤堂は突然の出来事に驚くことしかできなかった。

「陣内さんには誰がいるの!?」

藤堂の肩を揺すりながら、綾香は言った。

「あの人の心の中には、一体誰がいるの!?」

「周さん、落ち着いて…」

もう止まらなかった。

陣内が好き――ただそれだけの気持ちが綾香を突き動かしていた。

「騒がしいぞ、何事だ?」

社長室のドアが開いたかと思ったら、陣内が出てきた。
< 240 / 433 >

この作品をシェア

pagetop