Monsoon Town
天まで届きそうな白くて高いビルが2つ並んでいた。

“セレブご用達”の言葉が似合いそうだ。

「見て、社長の車よ」

その声が聞こえて、那智はホテルから視線をそらした。

黒く光っている1台の車――あれが“ベンツ”と言うのだろう――がホテルの玄関に止まった。

「あの人、背の高い人が社長よ」

先に車から降りたのは、陣内だった。

当たり前だが、スーツではなく私服姿だった。

青の長袖シャツにブラックジーンズと言うラフな格好をしていた。

「あら、あの子は誰かしら?」

一瞬だけ思っていたことが、口から飛び出したのかと思った。
< 248 / 433 >

この作品をシェア

pagetop