Monsoon Town
陣内の隣にいる人物――藤堂ではなく、彼女の方に視線が固まった。

小動物のようなかわいらしくて、愛らしい顔立ち。

肩までの黒髪をサイドで1つに束ねて、シュシュで結んでいる。

オレンジ色のレースのワンピースがよく似合っていた。

一体、あの子は誰なのだろうか?

どうして、陣内と一緒なのだろうか?

「あの子、社長の婚約者じゃない?」

誰かが言った瞬間、那智の心臓がドクン…と鳴った。

婚約者――その意味は、わかっていた。

「社長、この前お見合いしたそうだしね」

「たぶん、あの子が例のお見合い相手の子なんだろうね」

お見合い――その単語が、那智の心に重くのしかかった。
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