Monsoon Town
そう呟いた陣内の顔は、悲しみにあふれていた。

陣内のこんな顔を見たのは、初めてだった。

今にも泣き出しそうだった。

「母さんは、そんなことしない…!

そんなことする訳ない!」

陣内は拒否をするように、激しく首を横に振った。

突然のようにそんなことを始めた陣内に、藤堂は戸惑った。

「母さんはそんなことしない!

そんなことする訳ない!」

同じことを叫び、首を横に振っている陣内は壊れていた。

「陣内!」

藤堂が叫んで名前を呼ぶと、陣内はハッと我に返ったと言うように動きを止めた。
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