Monsoon Town
「――藤堂…」

目には、今にも涙がこぼれ落ちそうだった。

「お前の母さんがそんなヤツじゃないことは、俺が1番わかってる」

そう言った藤堂に、陣内は首を縦に振ってうなずいた。

「あんなものは、俺たちの見間違いだ。

あの人は、全く関係ない赤の他人だ」

そう、あれは本当に別人だ。

自分たちの知ってくる、母親じゃない。

あの人は他人だ。

母親によく似た他人である。

自分たちは、見間違えただけである。

よく似た人と間違えただけだ。
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