Monsoon Town
「あっ…」

家の前に止まっていた見覚えのあるスポーツカーに、陣内と藤堂は立ち止まった。

この前見た思い出したくない出来事がよみがえる。

違う!

違う!

違う!

止まっているスポーツカーにもたれかかっているのは、この前見た若い男だった。

その男は陣内の家をジッと見て、誰かを待っているようだった。

「――陣内…」

藤堂は恐る恐る、陣内に視線を向けた。

当の本人は固まっていた。

震えもしなければ、言葉を発しようともしない。

その光景に目を奪われたかのように、その場で固まっていた。

「お待たせ」

その人――陣内の母親が家から出てきた。
< 319 / 433 >

この作品をシェア

pagetop