Monsoon Town
彼女のことを心の底から気に入っていた兄はショックのあまり、しばらく立ち直ることができなかった。

「お父様、陣内さんにはおつきあいしているお方はいないんですよね?」

そう聞いた綾香に、
「陣内さんに関する色恋沙汰は特に聞いてないけど」

父親は答えた。

「そう、ならいいです」

それに対して、綾香はニコッと笑った。

「今夜はもう遅いから早く休みなさい」

「はい、おやすみなさい」

父親に頭を下げると、綾香は部屋を後にした。

「綾香」

自室に戻ろうとした綾香を呼び止めたのは、兄の周陽平(アマネヨウヘイ)だった。

「お兄様、何ですか?」

綾香はそんな兄に声をかけた。
< 46 / 433 >

この作品をシェア

pagetop