Monsoon Town
「気乗りじゃないみたいだな」

そう言った藤堂に、
「結局はじいさんが決めた話だろ」

陣内はため息をついた。

「いいところのお嬢様だろ。

俺からして見れば贅沢なもんだ」

そう言い返した藤堂に、
「お前がする訳じゃないからな」

陣内はプイッと横を向いた。

キュッと、藤堂は蛇口を閉めた。

「終わったのか?」

「おかげさまで。

毎日のようにやったら嫌でもなれる」

手についた水滴をハンカチでぬぐいながら、藤堂が言った。

「――藤堂が女だったらよかったのにな」

陣内が呟くように言った。
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