Monsoon Town
陣内が藤堂の顔を見つめた。

「しょせん、俺たちのご先祖様から代々続く関係には何も変わりはない。

藤堂家が主人である陣内家を支えるのは、昔からの役目だ。

俺はそのしきたりを理解していたうえで、幼い頃から何かとお前を守ってきた。

それは、お前が苦しい時もな」

最後の部分は、ほんの独り言だ。

しきたりを守るのは、藤堂家の血筋を持っている人間としてのことである。

主人がつらい時も、主人が苦しい時も、それを支えて行くのは、従者としての自分の役目だ。

「女になっても、今みたいに口うるさいのは変わらないか…」

ボソッと、陣内が呟いた。
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