Monsoon Town
仕事はもちろん、プライベートも一緒だ。

食事をするのも、その後片づけをするのも、自分の役目だ。

「女房…って言うよりも、俺の役目は秘書兼家政婦なんだろうな」

そう呟きながら、藤堂は陣内の家の隣のドアを開けた。

1人暮らしの我が家に足を踏み入れて電気をつけると、壁にもたれかかった。

「伴侶を迎えたとしても、あいつの中にある記憶は一生消えないんだろうな…」

ポツリと呟いた声は、誰にも聞かれることなく消えて行った。

陣内の記憶――それは、彼の心の傷でもある。

幼いあの日に受けた、あの時の傷を思い出すと胸が痛かった。

「――周財閥のお嬢様があいつの傷を忘れてくれるほどの相手だと願いたい…」
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