恋文
病院から歩いて5分。
絵に描いたような公園がそこにあった。
ブランコ、すべり台、鉄棒、砂場、そしてジャングルジム。
花壇の花はいつも綺麗に手入れされている。
必要以上に多いベンチ。
子供を遊ばせている母親や老夫婦をよく見かける。
その一つに腰掛けると目を閉じたまま空を仰いだ。
まぶたの裏に伝わる明るさ。
鼻の頭に伝わる暑さ。
こんな時はいつも思う。
タバコが吸いたい。
やめてからもう5年が経つ。
吸えないことに対するイラ立ちや不満はない。
それでも恋しくなるものだ。
そんな思いを断ち切るように立ち上がるとカメラを構えた。
ファインダーを覗きながら体を動かす。
突き抜けるような青い空。
笑う子供。
色鮮やかな名も知らぬ花。
誰も座っていないベンチ…。
ーカシャッ
「「あ。」」
ファインダー越しに目が合ったのは一人の少女だった。
怒った顔をしてこっちに向かってくる。
仕方なく、俺はカメラから顔を離した。
「今、撮ったでしょ。あたしのこと。」
まるで中学生みたいな落ち着きのない声だった。
敵意しか感じられない瞳。
顔を少し傾けて俺のことをにらんでくる。