赤ずきんちゃんと狼くん-結婚編-
わたしはすぐに後悔した。
顔を上げた瞬間、唇に柔らかい感触を感じた。
「―――!?な、やめ‥‥っ!」
口を開いた途端、隙間から入ってくる彼の舌。それは遠慮なくわたしの口内をうごめき、蹂躙する。
「…やっ……ん…ふ、んんっ!」
不覚にも彼の接吻に陥りそうになったとき、彼の手がわたしの腰からだんだん下へと下っていることに気が付き、彼の手を掴んで阻止するが、逆にわたしの手を彼に掴まれて一つに纏められてしまった。
「‥綺麗な足だね」
そういってわたしの足に口づけをする彼。
「‥‥んっ」
その唇はだんだん上にあがっていく。
「僕のこと、嫌い?」
急に顔を上げ、再度わたしに尋ねる彼の表情はどこか悲しそうだった。
「‥‥‥嫌い」
「‥そう。じゃあ、優しくする必要はないね」
傷付くかと思っていたのに、予想に反して彼は微笑んだ。
とても楽しそうに。
けれど、彼の瞳は全く笑ってない。
悪魔のような笑みを浮かべる彼。
そんな彼に底無しの恐怖を感じた。
「ねぇ‥、結婚しよう」
いきなりの求婚に驚いたわたしは、すぐに返事をすることができなかった。
「っていっても拒否権はないけどね。結婚するんだし、遠慮しなくてもいいよね?」
「‥はい?」
間抜けな返事をするわたしは、なんのことか全くわからない。
目の前でクスクスと笑う彼。
もう逃げられないかもしれない‥。
わたしは彼につかまってしまった。