赤ずきんちゃんと狼くん-結婚編-
「おばあさん。僕、この子と結婚します」
わたしの横に座ってパンを食べていた彼の突然の告白に、飲んでいたスープを落としそうになった。
「な、何言ってるの?あなたと結婚するなんて言ってないじゃない!」
「君に拒否権はないの」
にっこりと微笑んで答える彼。
「なっ‥!」
「そうかい、そうかい。早く曾孫の顔を見せておくれよ。私ももうそんなに長くはないからねぇ」
そういって微笑むおばあちゃん。
最後の言葉に悲しくなるけれど、途中の言葉を思い出して顔を赤く染めるわたしは何も言うことが出来なかった。
「はい。あと一年待っていただければ、子供をつれてまた来ます」
「おや。一年でいいのかい?それはまた早いねぇ。楽しみにしているよ」
「はい。それではおばあさん、ご馳走様でした。用事も済んだので僕たちはこれで失礼します。お邪魔しました」
混乱状態のわたしを放置して話が終わり、彼は立ち上がってわたしの手を取った。
「帰るよ」
そういった彼は満足そうに、とても幸せそうに笑っていて、わたしは何も言うことができなかった。