恋して、チェリー
『すげーじゃん、1ヵ月って』
『お前どこまで魔性……んだよ』
所々少し掠れてはいるが、ちゃんと録音されてる。
このおぞましいデータを削除しようと、親指をボタンへと滑らした時だった。
「……っ!」
今までで、1番バットなタイミング。
恭一が教室へと入ってきた。
――カシャン……ッ
きっと、バチが当たったんだ。
……オレは、逃げ出してしまったから。
後ろめたい気持ちと動揺が重なって、動画が再生されたままケータイが手の内から滑り落ちていく。
血の気が、引いた。
「ここからは、ちぇりちゃんの想像に任せるよ」
――あの冷め切った目を思い出すと今でも胸をえぐられる気分だ。
その日から、恭一はオレと口を聞いてくれなくなった。
アキ先輩は、驚く程寂しそうな目をして話してくれた。