恋して、チェリー
‐‐‐‐‐恋心ドロボウ
――『恭一はまだあの苦しみから逃れられずにいる』
どうか、アイツを救ってやって欲しい。
アキ先輩の、願い。
あたしに出来ることなら、恭一くんを救ってあげたい。
おバカで妄想チックで、変態で元気だけがとりえのあたしだけど。
彼を想う気持ちは、誰にも負けないもん。
それでも、確かに彼は、胡桃ちゃんを本気で好きな時期があったんだ。
少しの間だけど、あたしの知らない彼をあの子は知ってる。
あたしから離れて、いつか――、胡桃ちゃんの元に行ってしまうかもしれない。
心の奥底で生まれてしまった不安は、今のあたしじゃせき止めることも……どうしようも出来ない。
それに、胡桃ちゃんはこの後どう出るのか。
彼女の考えることも、何も予想出来なかった。
「ちぇりちゃんっ!」
気が付けば、3組の前を歩いていたようで呼び止められる。
目の前で微笑む天使のような子がアキ先輩が話したように魔性の女だなんて……信じきれなかった。
「勝負、しよ?」
――宣戦布告されたのは、あまりにも突然だった。