恋して、チェリー


胡桃ちゃんのその言葉に、ザワザワと周りがよどめき始める。



「王子の初カノ兼“元”カノのあたしと、今カノのちぇりちゃん」


――今日からアタック開始!


そして、来月の20日。

その日に彼に
“自分にふさわしい”彼女を選んでもらうの。



来月、7月のその日は終業式の日だ。

王子に選ばれた者は、そのままラブラブしてバカンスってワケ。



「どうかな?」

可愛らしい天使が、徐々に悪魔に変わっていく。


白い衣装が、真っ黒に。

天使の輪なんて焼け落ちて。


生えてない尻尾まで、ニョキニョキと奇妙に動いた。




「恭一くんは知ってるの?」

「……、あはっ、忘れてた」

数秒の沈黙の後、お得意のボケ。



本当、あたしにそっくり。




「ねぇ、今の聞いた?」
「初カノって……」

「やれやれ~!」

この機会を、狙ってたのか。


冷やかす男子まで現れてる。



勝負をしかけたのは胡桃ちゃん。


こんな雰囲気じゃ、断れないじゃない。

初めから、これが目的だったのね……?




< 110 / 202 >

この作品をシェア

pagetop