恋して、チェリー
‐‐真っ黒なさくらんぼ
――守ってよ、オレを。
守ってあげたい。
でも、ダメなの。
それじゃあ王子の為にならないことを知ってるから。
逃げてちゃ、ダメだから。
――それを、伝える前に。
「ラブラブしたいって?」
「え、?」
さっきあたしが言った言葉は、きっと筒抜けだったんだ。
イジワルな声が、耳を掠める。
ついさっきまでの、弱気な彼を感じさせない声。
細長い指が顎に降りてきたと思ったら、強引に後ろを向かされて。
「…んん……っ」
微かに冷たい唇が、押しつけられた。
王子らしくない、身勝手で強引なキス。
「ん……」
だけどそれは一瞬で、優しいキスへと変わる。
王子の背中に腕をしっかりと回して、あたしはそのキスを目をつぶって感じてた。
「恭一……く…ん」
途切れ途切れに、彼の名を呼びながら。
あたしから、離れちゃヤだよ?
そんな言葉さえ紡がせてもらえないキスだった……。