恋して、チェリー
「へぇ~」
「そんなのあるんだ」
……あたしより先に、食い付いたふたり。
あたしの名前と同じ――?
もしかしたら、あたしをおびき寄せる罠かも知れない。
でもちょっぴり運命を感じてしまったあたしは、OKの返事を返してしまう。
ってか、売られた喧嘩は買わないと。
もしなんか危なくなったら、いつでもメールしてって。
アキ先輩も言ってくれたし。
これが胡桃ちゃんの作戦の序章に過ぎなかったこと。
あたしがまんまとそれにハマってしまったこと。
アキ先輩が話してくれた、あのカフェ。
あのカフェの名前を知らなかったことに、あたしは後悔することになる。
ターゲットは、恭一くんではなくあたし。
何でそれに、気付けなかったんだろう。
この勝負は、どれだけ自分が王子にアピール出来るのか。
最後は、王子に選んでもらうんだからそこが焦点だと思ってた。
王子に相手にされない以前の問題を抱えた彼女。
恭一くん自身の黒色なオーラに増して、アキ先輩と女の子達の鉄壁のガードに。
――トドメの一言。
最初から、彼女は分かっていたんだ。
今さらどうやっても、彼の心は手に入らないことを。