恋して、チェリー
「懐かしいっ!」
ここ、よくふたりでカラオケ行ったんだ。
可愛らしい笑顔を振りまく彼女はあたしにとっては悪魔に見える。
きっと、みんなこの笑顔に騙されるんだろうな。
チラチラと彼女に注がれる、男の子の視線を感じながらそう思う。
「ここ、ここ!」
胡桃ちゃんが指差したのは……、
【Red Cherry】という看板がぶら下がっている、可愛らしいカフェだった。
「可愛い……お店」
――本当に、あたしと同じ名前。
2階のオープンテラスもそうだけど、赤×白のギンガムチェックに統一されていて。
いかにも女の子らしい、可愛らしいお店だった。
「どうする、どうする~?」
「え~? どうしよう?」
おいしそうなデザートがぎっしり並べられたメニューを渡され、
気が付けば胡桃ちゃんのペース。
「あたしは、チェリーパイで」
平然を装って、どうにかそのペースから逃れた。