恋して、チェリー



「ふふっ、さくらんぼ好きなんだ?」

「ま、まぁね」

そんな笑顔見せても、あたしは騙されないんだから!



運ばれてきたケーキをつつきながら、胡桃ちゃんが勝負に出た。



「実はここ、ね」
「恭くんに告られた場所なんだぁ~」


「あはっ、一本取られちゃった」

なんとなく、感づいていた言葉をあたしが代弁してあげた。


――……さくらんぼが口の中で、もぎゅもぎゅと潰れていくのを感じながら。


フォークの先を天井に向けて、嫌みっぽく返す。


それは予想してなかったみたいで胡桃ちゃんが呆れて笑う。



「嬉しかった、な……」

季節の生フルーツのジュレをスプーンですくいながら、ため息をひとつ。



――何が嬉しかった、よ。


あんたには苦情だっけ?

あ、九条ねぎの方か。


“九条先輩”
って本命がいたんでしょうが!



奥歯に潜むさくらんぼを、んくっと飲み込む。



「本気で好きになりかけた時も、……あった」

――彼女の本性が、徐々に漏れ出す。


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