恋して、チェリー
‐‐‐‐‐‐6月の花嫁
「ははっ、……ヒドい顔」
ショーウィンドウに映ったあたしの顔は、涙でぐちゃぐちゃになってた。
――彼と、永遠の愛を。
真っ赤なバラを散りばめた中に、純白のウエディングドレスを身にまとって走る女性。
飛び込んでくるその人を、抱き止める男性。
張り出されていたのは、ふたりが幸せそうに笑う大きなポスター。
「新しい香水、出たんだ……」
ふと、みずみずしいバラの香りが鼻の奥をくすぐって。
――あたしの涙を優しく止めてくれた。
その香りに誘われるままに、デパートの1階へと足を踏み入れる。
フラフラとおぼつかない足取りと虚ろな瞳をしたあたしは、どれだけ変な目でみられただろう。
気が付けば、その香水を手に取っていた。
「あら」
髪を綺麗にまとめ、バッチリとメイクを施したお姉さんがあたしの視界の隅に映った。
「気になる?」
顔を上げれば、黒を基調とした大人っぽくてオシャレなお店にハッとする。