恋して、チェリー


「お待たせ」

にっこりと微笑むお姉さんの手には、バラがプリントされた小さな手提げ袋。



「結婚に気付いたアナタに、あたしから幸せのおすそ分けよ」




――――――……





「ねぇね、おかえり~」

ココとナナのいつものお出迎え。


「ただいま! ハルは?」

「お風呂に入ってるよ」

髪を濡らしたココが答える。



元気がないことを感づかれたくないあたしは、

精一杯の笑顔を崩さないように、急いで部屋へと逃げ込む。




制服のまま、バフッとベッドへとダイブした。




「もらっちゃった……」

紙袋の中から黒い箱を取り出す。


七色に透けた小瓶の上には、バラに彫刻された赤いガラスが取り付けられている。



「……可愛い」

――香水って、こんなに小さいんだ。

手のひらでコロンと転がるそれがどこか愛らしい。



シュッとひと吹き出してみると、バラの香りがあたしをなぐさめるように優しく香った。


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