恋して、チェリー


お姉ちゃん想いで、妹たちの面倒もしっかり見てくれる弟。


あたしがこんなんだから、その分しっかり育ってしまったんだ。




「お姉ちゃん、ダメだね……」

いらない心配なんてかけたくないのに、きっともうハルは――気付いてる。




……あたしに元気がない原因を。





でも、部屋の外へ出て行く勇気もない。

ハルを追い掛ける気力さえも、今は湧いてこなかった。



バラの香りに包まれて、お風呂にも入らないままあたしはベッドの上で眠ってしまった――。





「……あ、? ほわ?」

ぼんやりと重たいまぶたを擦って手探りで時計を探せばもう11時を過ぎている。



「夜更かしはお肌の大敵……」

いけない、いけない。


早くお風呂でメイクを落として、くすんだ肌にパック、パック。



「もう皆、寝てるよね」

それを願って、音を出さないよう全神経を集中して部屋からそっと抜け出した。



カタ――…ッ

爪先に何か固いものが当たってあたしはビクッと肩を震わす。


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