恋して、チェリー
「何でまた急に、」
「恭一くんのこともっとよく知りたいの……」
一瞬だけ彼を見た後、地面に落ちた長い影へと視線を落とす。
「……」
長い長い沈黙の後。
「……ごめん」
あたしの心も、夕日と一緒に深い深い闇へと落ちていった。
――『用事があるんだ』
……そっか。
それじゃあしょうがないよね。
夕闇に包まれていく空の下、……ポツリポツリと家に電気が灯っていく。
「きれい」
小さい頃から大好きな光景。
遅くまで遊んでいたあたしを、パパが迎えに来てくれて。
温かくて、大きな背中からみたその景色は、今でもまぶたに強く焼き付いてる。
「あれ?」
マンションが少し見えてきた頃、ハルがあたしとは反対方向へと走って出て行くのが見えた。
「もう遅い、のに……」
さては……女の子の影?
ふふ……ああ見えて結構大人びてるとこあるから。
ハルに会おうと家に訪ねてくる女の子がたくさんいたこと、あたしは知ってるもんね。
悔しいけど……どれもみんな、ハルにはもったいないくらい可愛い女の子たち。