恋して、チェリー


「ただいま~」

リビングで新聞を読んでいたパパがこっちへと振り返る。


「ハルは?」

「さっき出掛けていったよ」

――夕飯を急いで食べていったんだ。

どこ行ったんだろ?



どうやらパパも場所までは知らないみたい。


ココとナナはふたり並んでテレビに夢中だ。



キッチンから漂ってくるいい匂いに、その疑問はすぐに逸らされてしまった。






「どんな用事か聞いたの?」

「ううん……」

キナから聞かれ、力なく答える。


「そうだよねぇ」

「うん……、さすがにウザがられるかなと思って」

比奈にそう話す。



あたしを家に入れるのが嫌だったの――?

本当に用事があったのかもしれないのに。

あたしはいつも自分のことばっかりで……どんどん卑屈になっていく。



勇気を出して……言ったのに。


胡桃ちゃんは王子の家へ上がったことはあるのだろうか?

そんなの、嫌だよ――。



自分と彼女を比べてばかりで、そんな自分に嫌気が差す。

答えなんて分からないことを、あたしが1番知ってるクセに。


そんなことを思っては、勝手にヘコんで。


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