恋して、チェリー
――『ね? だから恭をあたしに返して?』
恐ろしい子。
天使の皮を剥いだら、中身は悪魔でも身震いする恐怖のかたまり。
嘘、かもしれない……。
でも、本当かもしれない。
真実を握るのは、あのふたり。
あたしには立ち入ることなど出来ない、“ふたり”なんだ。
「はぁ……はっ、」
呼吸が荒い。
一刻も早くあの場所から抜け出したくて。
どうやって、ここまで来たのか覚えてないくらい。
気が付けば、保健室のドアの前。
ひとつだけ分かるのは、それだけあたしが必死だったってこと。
――『アイツの存在が……怖い』
……そう言った彼の瞳が忘れられない。