恋して、チェリー



「え~……、本当?」

――ちぇりの妄想で美化されてない?


「……すてき」

次の日、待っていたとばかりに、あたしは昨日の話をしたんだ。


まさか本当に、まるでドラマの展開――みたいに。

こんなドラマチックに恋にオチるなんて。



「で、大丈夫だったの?」

そう話すキナは、あたしの太ももに視線を落とした。



「大丈夫、だいじょーぶ」

ちょこっと触られただけだから。


目の前で、親指と人差し指をギリギリまで狭めた隙間からキナを見てみる。



隣の比奈も、安心したとばかりに安堵のため息をもらしてくれる。



「でも残念だね、月」

「……うん」

砕けた月は元には戻らないけれど名前も知らないあの人に。



「ちゃんと取ってあるんだね」

小さな袋の中で光るのは、紛れもなくあたしの琥珀の月。




――『……はい』

わざわざあたしの足元に散らばるソレをかき集めてくれて。


――『大事なモノ、だった?』

下から見上げられる視線にいとも簡単に射抜かれたあたしは。


コクン、とただ静かに頷くだけで何も喋れなかった。




「ちょっとソレ、予想外じゃない?」

「あたしもそう思う」

自他共に、あたしの恋愛体質を分かっているふたりは顔を見合わせる。



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