恋して、チェリー



急に息苦しさを覚えたあたしは、胸を押さえたまま飛び起きた。



「な、……に? 今の……」

頬を触ると、濡れていることに気が付く。


――あたし、泣いてた……?



自分が今、なぜ涙を流しているのか。

この胸の痛みは何なのか。



「思い出せない……」

夢を見た気がする。


欠けていた月は多分、琥珀色。


頭にチラつく、あの藍色の粒は何……?


自分でもよく分からないけど、悲しい夢なんだと、なぜかそれだけは分かった。




「やだ、怖い」

……怖いよ。


思い出せない夢なのに、胸に鋭い痛みが走る。


いくら考えてみても、内容は分からない。


ただ……、断片的に覚えてるだけで。


悲しみの“原因”が分からない。


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