恋して、チェリー
――ふと、後ろに誰かの気配を感じて。
涙で滲んだ視界の中、真っ白なハンカチが写り込む。
恭、一くん……?
ためらいがちな視線を上へ上へと上げていった。
「……」
意外な人物に、あたしが何も出来ず見つめていると――。
「大丈夫? って、大丈夫じゃないかぁ」
ニヘラ、と気の抜けたその瞳は、今まで見たことないくらい優しくて。
それがまた、こぼれ落ちる涙に拍車をかけていくのが分かる。
「ふ……っ…、」
困ったような顔であたしを見下ろすアキ先輩を見つめたまま、あたしはまた泣いてしまった。
「許してやって、アイツのこと」
――それだけちぇりちゃんが大切だったんだ。
急に話し始めるアキ先輩に、あたしは焦りを感じ始める。
何……?
何のことを言ってるの――?
「伝言。今日の放課後、ここで待ってて欲しいって」
「じゃあ……っ、」
黒く塗りつぶされた世界に、一筋の光を感じる。
ちゃんと話出来……
「今日に早まったんだ、ジャッジを下す日」
「――え?」
だって、まだ……
「ごめんね。オレが話せるのはここまで」
真っ白だったハンカチに、シミが出来てしまった頃。
――アキ先輩は忽然と姿を消していた。