恋して、チェリー
まるで鉛でも付いているかのような重たい足取りであの場所へと向かう。
来る途中、胡桃ちゃんのクラスが騒がしかったな……。
「……ふふ…っ」
あたしをバカにしたような笑い声は、未だに慣れない。
冷たく突き刺さるような視線はいつものことだけど。
なんか今日、雰囲気がおかしくない――?
深く考えることも出来ないまま、非常階段のドアを開けた。
「……なんで、…」
広がった視界の中、あきらかに場に合ってない光景。
久しぶりに見た、恭一くんの顔。
ニコニコと、薄気味悪いくらいに笑顔を浮かべる胡桃ちゃん。
ふたりの右手と左手は、しっかり握られていたんだ――。
「あたしの勝ちね、ちぇりちゃん」
そう言った彼女は、繋がれた手をあたしに見せ付けた。