恋して、チェリー
「ちぇり、こっち」
「早く!」
気の利くふたりが、あたし達を鉢合わせさせないように、いつも気遣ってくれた。
そのお陰で、終業式の日まで彼の姿を見ることは1度もなかった。
彼の声。
彼の顔。
後ろ姿や、横顔、ショコラの瞳。
どれもあたしの中であやふやになってしまって……
何一つはっきり思い出すことが出来ない。
「これでいいんだ」
これが、彼の選んだ選択なら。
「ねぇね! アイス買いに行こ」
ココに続き、ナナも部屋へと入って来る。
「バニラ、チョコ、ストロベリー」
ベッドに腰掛け、ルンルンと首を振るココは買いに行く気満々。
そういえば、冷蔵庫のアイス……残り少ないかも。
「行こっか!」
「うん!」
ナナがぴょん、と飛び上がった。