恋して、チェリー


「ん……、」

中途半端な生返事を返すと、クスッとイタズラっぽく笑ってくれたんだ……。


浮気をされてしまったことがショックで、冷静になれないまま怒ってしまったあたしは。

――即座に彼をフッた。


誤解だの、あれは勘違いだの、必死でそう言い訳をする彼が、あたしはどうしても許せなかった。



「彼女は元気?」

でも不思議と、今は何にも彼に対してそういう感情はないし。

あの時あんなに怒ってしまったのに、今は別にどうってことない。


だからこんな嫌みじみたことも言えることに気付く。



「ははっ、相変わらずだな」

ペットボトルで濡れた唇を手で拭いながら、笑いを堪えきれない様子の彼。



――……そっか。

“今”こうやって話して。

笑い合えるのは、あたしがちゃんとあの頃を“過去”に出来た証拠なんだ。


自分からフッたクセに、いつも心のどこかでは後悔していた自分。


いつまでも、めそめそして、ぐずぐずして。



――『しっかりしなさいよ!』

キナからの強烈ビンタを食らったのを、今でも覚えてる。


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