恋して、チェリー


「でも、どうしてここに?」

高校は、隣町のはず。

あたしも彼のことは早く忘れようと、わざとこっちの高校を選んだんだ。


「……ああ、最近引っ越して来てね」

――両親の都合で。


「ふぅん、そっか」

「ま、言いたいこともあったしね」

……何?


意味深に笑う彼は、絶対に何かを隠してる。

あたしはそう――確信した。



「これ」

ポケットから出したのは、学生証のコピー。


怪訝な表情のまま、彼を見つめていると。


「誤解解くの、遅くなった」

――ただ、そんだけ。


あたしの手のひらに薄っぺらい紙を押し付けると、悠々と去っていくのだった。



「ねぇね!」

買い物を終えたココとナナがちょうどコンビニから出て来たから。


くしゃりとシワを作ったソレを、反射的にハーフパンツのポケットへと押し込む。



誤解とこれと、何の関係があるんだろう。



「ちょっ、買いすぎ!」

パンパンに膨らんだ袋をそれぞれ持つココとナナを尻目に……

あたしはそのことで頭がいっぱいだった。


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