恋して、チェリー


不意に、ポケットの中のケータイが震える。


「……いけないっ」

いくら早く着いたからって時間を潰し過ぎた。



【From:キナ】

もう集会始まるよ

先に比奈と
体育館に行ってるから!


---END---



急いでケータイを閉じて、走り出す。



「っ……、?」

ドアの直前で、つま先に何かが当たった気がして。

反射的に下を振り向く。




「――…あ…」

声が、詰まる。



これ……。



そこに落ちていたのは、あたしが失くした琥珀の月。

初めて、恭一くんに会った日。


――助けてもらった日。


粉々に砕けてしまったけど、この月が、彼に逢わせてくれた気がして……

なかなか捨てることが出来ないまま、今も机の中で眠ってる。


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