恋して、チェリー
じゃあ、あの時断ったのは、ハルとの先約があったから――?
何で恭一くんは何も言わず……
「内緒にしてくれって、頼んだんだ」
先読みしたかのように、ハルが遮る。
「あの日、姉ちゃんが落ち込んでた日……」
そう続けるハルに、ハッと思い出したことがある。
さっきの表情、あの表情は……
胡桃ちゃんに誘われて、カフェに行った日だった。
当時の彼とのロノケ話に、告白を“した”か“された”にスポットを当てられ。
最後のトドメに、もうエッチはしたのかと1番気にしていたことを聞かれて……
――あたしが散々打ちのめされた日だ。
――『なんかあった?』
気付かれないように振る舞っていたのに、ハルには呆気なくバレたよね。
何も答えられずに俯くあたしに、ハルは低い声で返事を返した。
――『――アイツか』
あの時の表情……。
「でも、……何で」
「あの日の夜、連絡して会う約束を取り付けた」
――姉ちゃんのことで話があるって言ったら、すぐにOKの返事が来たよ。
「姉ちゃんが落ち込んでる原因はあんただろ、ってね」
「……ハル」
そんなに心配してたの――?
連絡先を聞いて、彼を呼び出して……。
「今まで散々見てきたから」
――姉ちゃんが落ち込むとこ。
スプーンを持つ……ハルの手が止まった。