恋して、チェリー
「ごめん、オレ」
スプーンに乗せた一口分のかき氷が溶け始める。
はちみつみたいな優しい色に。
「もう……終わったことだから」
ハルは悪くないよ。
だってあたしを思ってしてくれたんでしょ?
「今日だっててっきり、アイツと……」
「初カノとね、ヨリ戻したんだ」
――ハルも初めての彼女は大切にしなね。
それだけ告げると、マックの分を合わせたお代をテーブルに置く。
「先帰ってるからハルはゆっくりしてって」
かき氷を半分も食べ終わらないまま、お店を出た。
ハルがあんなに心配性になってしまったのは、完全にあたしのせいだ。
もう、心配かけないようにしなきゃ。
心配、かけたくない、のに……。
過去にしようと必死にもがいているのに。
こんなに苦しくて、早く楽になれたらって。
ポケットに入ったままの琥珀の月がそれを必死に押し止めてる。
「行くんじゃなかった……」
もうあの場所は、あたしの場所じゃないのに。
行かなかったのなら、彼にも会わなかったしこんなものも拾わなかった。
光の粒を振りまく河原を見つめ、小さな決心を固める。
月が潰れてしまいそうな程に、手に力を込める。
「どうして……っ、」
どうして……な、の……っ。
あたしの手の中から抜け出すことのない月。
これを投げて、すべてを投げ出してしまえば楽になれるかも、なんて。
「…ふっ……」
川に捨てる、なんてあたしにはやっぱり出来なかったんだ――。