恋して、チェリー
「「キナ、早い……」」
「アンタ達が遅いのよっ!」
みるみる遠くなるキナの背中に、比奈とふたりで声をかけると、どこか楽しそうなキナ。
「運動好きだから……」
「走るのが好きなのよ」
既に上がり始めた息で精一杯返事をする。
「先、行って……っ、いいから」
あたしと比奈との距離も離れ始め気遣って、ペースを合わせていたら苦しそうに比奈は言った。
「分かった」
それぞれ、自分のペースで地面を蹴り出す。
――あ、なんか気持ちいい。
空也のこと、どうしよう。
直接話したいって、やっぱりずっと溜まっていたうっぷんを放つ為だよね。
あたしだって、きっとそう考えちゃうもん。
誤解が解けた今、冷静になれなかったあの頃の自分が恥ずかしくて……何より情けない。
それを今まで黙っていたのは、相当キツいよね。
誤解されたままじゃ嫌だから、時間がかかっても解こうとした。
あたしの怒りが引くのを待ったのと、神様が引き合わせた偶然。
「ぐう、ぜん……」
だとしたらなぜ、“偶然”コンビニであたしと会った時。
あの時なぜ彼は、“偶然”にも、誤解を解く妹の学生証のコピーを持っていたんだろう。