恋して、チェリー


「じゃね」
「自分のキモチに素直にね」

別れ際に言われたキナの言葉が、ジワリと心に染み渡る。


あの公園に、行ってみようかな。


恭一くんと、キスした場所――。

あの場所へと、足が吸い寄せられるように向かっていく。

公園の遊具が見えてきた頃。


地面に映る長い影、キコキコと何かが揺れる音。

そっと忍ばせるように、足を踏み入れれば――誰かがブランコを揺らしてる。


逆行で真っ黒に塗りつぶされた背中か、心なしか小さい。

まるで元気のない背中に、あたしは何か違和感を感じ取った。




あれは、――ハル?



「……わっ!」
「わぁぁ……っ」

――ドスン、ガシャン!

驚かそうと背中を思い切り叩いたら……

想像以上にビックリしたらしいハルはブランコから落っこちた。


「ご、ごめん! そんなにビックリするとは思わなくて……っ」

見事な落ちっぷりに、必死で笑いを堪えながらも手を差し出す。


「笑ってんじゃねぇーよ!」

パシリとあたしの手を振り払うと砂の付いたズボンを払いながら立ち上がるハル。


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