恋して、チェリー


「何でここに?」

「思い出してた」

ふたり並んで、ブランコに腰掛ける。

真っ赤な光で空を染め上げていた夕陽も、今は山の向こう。



「あ、……ここで?」

――この場所で恭一くんと話したのかな。


「どこがいいかって聞いたら、ここって」

あたしみたいに、ここが“特別”な場所って彼も思ってくれていたのかな。




「初恋って、……そんなに大事なモン?」

唐突なハルからの質問に、一瞬戸惑う。


「そう、……かもね」

あたしの初恋は、幼稚園の時。


あの頃から暴走グセがあったのか……好きな男の子を追いかけ回してたっけ。


「オレには分かんない」

ブランコが切なげな音を奏でる。


「好きなコが出来たら分かるよ。ハルにだって」

この、焦がれる気持ちは。

ハルだったら、ちゃんと女の子を大事に出来る。

もし、軽い気持ちで寄ってくる子がいたら、あたしが追い払ってあげる!


手を振りかざすマネをすると、ククッと笑ってくれる。



「帰ろうか」
「ああ」

ママとパパ、ココとナナが待っている家へ。


< 190 / 202 >

この作品をシェア

pagetop