恋して、チェリー
「何でここに?」
「思い出してた」
ふたり並んで、ブランコに腰掛ける。
真っ赤な光で空を染め上げていた夕陽も、今は山の向こう。
「あ、……ここで?」
――この場所で恭一くんと話したのかな。
「どこがいいかって聞いたら、ここって」
あたしみたいに、ここが“特別”な場所って彼も思ってくれていたのかな。
「初恋って、……そんなに大事なモン?」
唐突なハルからの質問に、一瞬戸惑う。
「そう、……かもね」
あたしの初恋は、幼稚園の時。
あの頃から暴走グセがあったのか……好きな男の子を追いかけ回してたっけ。
「オレには分かんない」
ブランコが切なげな音を奏でる。
「好きなコが出来たら分かるよ。ハルにだって」
この、焦がれる気持ちは。
ハルだったら、ちゃんと女の子を大事に出来る。
もし、軽い気持ちで寄ってくる子がいたら、あたしが追い払ってあげる!
手を振りかざすマネをすると、ククッと笑ってくれる。
「帰ろうか」
「ああ」
ママとパパ、ココとナナが待っている家へ。