恋して、チェリー


「す、……すみませんっ、人違いでした!」

後ろ姿だけで判断した、あたしの致命的なミス。

想像していた王子サマの風貌とは、程遠い……。



ま さ か の 人 違 い。




はぁ……、ってことは教室から見ていた時点で間違いだったってことか。

また、振り出しかぁ――。



ふぅ……と、ため息を付いた時。




「――ジャマ」

と、冷たい声が背中にチクリ。



その声のする方、後方へと振り返る。



「言うね~」

「真ん中に突っ立ってんだもん」

ふたりの、男子。



あ、れ――……?


あたしは一瞬で、この男子の一方に釘付けになってしまった。




「とりあえず、どこっか?」

と、ニヘラと笑う男子の横で面倒くさそうな表情をしてる。



あたしが探してたのは、――まさにその人だったから。




……けれど。


「――…ッ、」

昨日はありがとうございました。


が、言えなくて。


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