恋して、チェリー
◇ * ◇
やっと言えた所で、チャイムがあたしの邪魔をする。
「で、では……っ」
くるりときびすを返し、その人に背中を向ける。
少し走り出したとこで、程よい低音ボイスがあたしの心を酔わす。
振り返り様みたその顔は、少し笑っているようにも見えたんだ。
――ドク、……ン。
あ、今体全体に酔い、回ったかも。
「――名前は?」
「1年1組……咲坂ちぇり…です!」
即座に自分の名前+学年とクラスを言えたのは。
あたしの人生で培われた賜物で。
恋愛初心者ならば、きっと“聞かれた”名前だけ。
それじゃあ、せっかく教えたとしても次のミッションは――クリア出来ない。
この広い校舎の中で、名前を知っただけじゃソレは無効なの。
まぁ、上履きの色で学年は判断出来るけどクラスまではね。
うちの学校は各年、13クラスまであるから。