恋して、チェリー
「でねっ!最後に名前も聞けたの!」
「良かったじゃん」
「エラい、エラい」
あたしが持ってきたポッキーをポリポリかじるふたり。
「2年生でね……橘恭一くんっていうの」
うっとりとした視線を天井へと向けながら話す。
「……あ、これはもう」
「恋にオチたっぽいね」
なんて会話はなんのその。
既にピンク色の妄想でいっぱいになりつつあるあたしの頭に、そんな会話が入ってくるハズもなく。
いつ暴走してもおかしくないくらい。
あたしのアクセルに乗せた足は、“いつでも準備OK!”と、ピースサインまで出している。
だって、だって――…!
今までは、何の接点も持たないまま一目惚れすることがほとんど。
でも、今回は違う。
あたしを“助けてくれた”。
恋の指数に、さらにボーナスポイントが加算され、スペシャルステージへと運ばれるのは……
紛れもなくあたしのハート。
そして、暴走する前のあたしの悪いクセのひとつ。
相手を勝手に美化してしまう事。
今回はいつもに比べ、ボーナスポイントが加算された為、さらにヒドい。
もう、あたしの中で王子サマに君臨しつつあった。
そして、午後の授業がひとつ、終わった後のこと。
思わぬ来客者があたしを訪れることになる。