恋して、チェリー



「はぁ……は……っ」

ヒリヒリしたほっぺを抱えながらあたしはただひたすら走る。


――あの人の教室へと。


それもそのはず。


つい、さっきの話。



「今から行って来な!」

「突撃~」

と、半ば強引にふたりに促され。


その、数分前。


「何言ってんの!」

「ちぇりから“暴走”を取ったらナニが残るの?」


――パチン!パチン

キナからの強烈ビンタ。

キナは何事に対しても妥協を許さない人だから。

平手打ちは……正直、イタい。



数秒後の比奈からのビンタは、あたしを甘やかしたようなモノ。


「ダメだよ!こういう時は本気でやんなくちゃ」

「でも本気ビンタ2発はイタいんじゃ……」

と、あたしを気遣ってやんわりと叩いたんだ。





――『自分に好意を寄せる女にはとことん冷たいからね、アイツ』


――『勘違いする女の子が多くてさ』


――『アイツが優しくするのは、“自分に好意を寄せていない”女だけだから』


――『これが、警告。じゃね』


ポカンとするあたしを尻目に、ソイツはまるで何事もなかったかのように去ろうとする。


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