恋して、チェリー
一気にまくし立てられて、その言葉を理解するまでにかかる時間がオーバーしちゃう。
でも、あたしの頭は“恋愛関係”の話なら授業の勉強に比べて、フル回転してくれる。
――『あたし、諦めませんから』
――『みんなね、“最初”はそう言うんだよ』
――『でもね、“最後”は全員が泣き崩れる』
冷たい王子の仮面を取ろうとしないアイツの前でね。
ちぇりちゃんは知らないと思うけど、アイツは誰とも付き合っていないんだよ。
いや、付き合って来なかった。
今まで告白した女の子は数知れずみんな玉砕で終わってる。
また、この事実が“アタシならイケるかも!”“アタシこそ!”
……みたいな、夢見がちな女の子を増やしちゃってね。
前向きで諦めが悪い、ちぇりちゃんのようなね。
困ったもんだよ、本当。
やれやれ、と言った感じで肩をすくませる。
と、いうことだからよろしくね。
小さくなっていく先輩の後ろ姿を見送る事しかできなくて。
“そういえば、この人の名前……なんだっけ?”
なんて、いつものオチャらけた考えなんかも浮かばなかったんだ。
蕾のまま枯れていく花みたいに、
――これから始まるあたしの恋も始まる前に枯れてしまうんじゃないかって。
ガラにもない事が、頭の中を支配し始めて。
どん底まで落とされたテンションを抱えながら、あたしは教室へと戻った。
――もう、
今日最後の授業が何の科目だったかですらも、思い出せない。