恋して、チェリー



「いつも暴走しちゃうちぇりには今日はしおらしく」

「はかなくね」


――とりあえず、今日は彼の話を黙って聞いてなさい!


ビシィッと重なった言葉が、見事にあたしの体を貫通。



しおらしく……?

い、いじらしく?


は――儚い……?



「あの、それ……どういう意味」

と、聞こうとした瞬間、チャイムが鳴ってしまった。



【儚い ―ハカナ‐イ】

・これといった内容がない
・しっかりしていなくて頼りにな らない

・あっけない



「……え、え~と?人の死についていう……っ!?」


「コラ!また咲坂か!」

気が付けば、電子辞書に映る文字を音読していたようで。



こんな風に怒られることは、日常茶飯事だったりする。



「そんなに放課後、補習をしたいのか?」

「したくないです!ご、ごめんなさい……っ!」

先生に見つからないように、そそくさと辞書をしまった。




儚く……今にも消えそうな感じ。

それって私の存在自体を否定されてるんじゃ……?


でも、やっと掴んだこの恋。



今まで散々だった無残に散ってきた恋。

私だって、終わったからって何も成長出来ていない訳じゃない。


“何か”を学んで、吸収して次の恋に全力で。



――そう、いつだって全力でいたいんだ。




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