恋して、チェリー
「――あ、」
ショコラ色の丸い瞳が、キラリ。
2-7の教室から出て来ようとするそれはまさに……あたしの探していた人だったから。
――『確かめてみるといいよ?』
ショーの準備は、しといてあげるからさ。
ただし、教室は自分で探してね。
クラスを教えられることもなく。
意味深な笑みを浮かべた先輩は、最後にポツリ。
――『オンナノコが傷付く前に手を差し伸べる、ああ……俺って罪なオトコ』
とか、なんとか言ってたっけ。
「アキがとりあえず、待ってろっていうから」
冷たい瞳であたしを見下ろす姿は王子サマのよう。
もれなく“本当の愛を知らない”というオプション付きで。
表情が、瞳が、オーラが、どこか陰っていて、ひんやり冷たい。
……そうか、あの先輩、アキっていうんだ。
“ショーの準備はしておくから”ってこういう意味だったのか。
「あ、あの……っ」
あたしが意気込んで喋り出した時
「アキを使っといて何の用?」
冷たい言葉が、グサリ、と音を立てて突き刺さった。
確かに、お礼は言えたし、向こうからすれば“今さら”って思われても仕方ないかもしれない。
目の前に立ちはだかるのは、冷たいオーラで女の子を寄せ付けない強者王子。