恋して、チェリー
「じゃ、いってらっしゃい」
「頑張ってね~」
いつもなら、みっつくっつける机が最近ではふたつに減っている。
こうして、恭一くんに会いにいける時間は限られてるから――お昼はとても貴重なモノなんだ。
こうして、毎日恭一くんに会いに行くのが日課になって、1週間と2日。
今のあたしの立ち位置は、友達でも……ましてや彼女でもない。
「恭一くん……っ」
「……」
――来た……と、ボソッと呟く様は、半分諦めモードだ。
ストーカーという、周りから見たら相当イタいであろう位置に君臨しているあたし。
でも、もう慣れちゃった。
最初は、頑張って早起きして作った手作りのお弁当を“いらない”の一言で瞬殺され。
毎日毎日、場所を変え教室から、体育館裏、非常階段、裏庭へと逃げ回る恭一くんを追っかけ回し
冷たい言葉を浴びせても、持ち前の超前向き思考で立ち上がるあたしに、
“もう何をしてもムダ”or
“ひたすら、シカト・もしくは、スルー”
ってことで、諦めちゃったみたいで。
お弁当を渡そうした回数、5回。
断られた回数、5回。
何の進展もないように見えがちだけど――。
「こんな場所、知らなかった」
恭一くんを追いかけて、初めて見つけた場所。
非常階段のおどり場、そこを少し下がった所に錆びた鉄製の階段がある。
立ち入り禁止の鎖を飛び越えると――ちょうどふたり分座れるスペースがあるんだ。