恋して、チェリー
「いい眺め、だね」
「……」
以前は、あたしが見つけた瞬間、逃げ出す恭一くんだったけど
今はこうして隣にあたしがいるのに関わらず、
黙ってる事には変わりないけど、どこかに行っちゃうことはない。
相変わらず黙ったままの彼に、あたしは構わず喋り続ける。
それは……沈黙がコワいから。
いつだって、そう。
片思いの時は安心出来ないんだ。
“自分が相手を好きで、相手も自分のことが好き”なんだと分かった瞬間。
この心は全て塗り替えられるのだ。
ブレーキがない為に、走り続けなければならない。
でも、こうして諦めずアタックし続けるあたしの真っ直ぐさがいいよって。
キナも比奈も言ってくれた。
“沈黙でさえ、心地いい関係”
一緒にいると、安心できる。
一緒にいると、安らげる。
これまで散々恋人に言われて来た……重い・疲れる、の言葉を反芻する。
だから今のあたしの目標はコレなんだ。
――『お前といると、落ち着く』
……でへへっ。
恭一くんの言葉を妄想する。
でも、恋のときめきや、心地いい胸のドキドキも忘れちゃダメ。
そこに、苦みというスパイスも混じってこそ、ホンモノの恋と呼べる。
お砂糖のように甘い甘い恋に酔ってちゃ、それはまだまだなの。