恋して、チェリー
‐‐‐‐好きだと言って
真っ赤に熟した赤い実は
甘い甘い夢を見るの。
あたしと彼の物語は、この甘酸っぱいさくらんぼから、全てが始まる。
* ◇ *
とある教科の授業中。
本来なら視線は黒板に向けガリガリとノートに文字を書き込んで。
耳は、先生の話に向けなければならない時。
あたしの視線は窓の外の景色――校庭に奪われ、先生の話なんて耳に入ってくるハズもなく。
大好きな背中からピタリと離れようとしない。
運よく、席は窓側で。
週2だけだけど、あたしがこの授業の時、恭一くんは体育が入っているんだ。
大嫌いな授業中に、大好きな人を見つめてられるってなんてあたしは幸せなんだろう。
ボールを追いかける背中を見つめながら、あたしはぐふふ……と笑みをもらした。
「コラ!また咲坂かっ」
と、お決まりのフレーズが飛び交って、ようやく背中から黒板へと視線を戻される。
先生が黒板に文字を書いてる時だけに許される至福の瞬間。
気を抜いて、外の景色に夢中になっているとこの有り様だ。
「はーいっ!ごめんなさいっ」
可愛く謝ってみたら、案外許されるモンなんだと
この先生に対しての上手な対応の仕方を最近学んだ。
ナマズ先生には、通用しないんだけどね。
授業の終わりを知らせるチャイムが校庭にも鳴り響くと。
「恭一くんっ!」